株式会社坂下組。 創業、昭和三年。 この会社には歴史がある。
本棚の片隅に、忘れられたように置かれた『呼び鈴』。
錆の入った銀色のベルを 黒い塗装が剥げた土台が支えている。
それをそっと持ち上げ裏を返すと 小さなラベルが貼ってあった。
S59.1 ㈱坂下組
自分よりも年上である。
この小さくも儚い製品に いったいどれだけの物語が詰まっているかと思いを馳せると 何かこみ上げてくるものがある。
夏の暑い日にセミの声と共鳴し、冬の寒い日は澄み切った空気に緊張感を与えていたはずである。
坂下組に訪れた人が いやいやながら人差し指をかざしたした人もいれば、あまりにもご機嫌で頭で呼び鈴を鳴らしちゃう人もいたんじゃなかろうか。
今は役目を終え、本棚の隅でただただ時が過ぎるのを待っている『呼び鈴』。
いつかまたこいつの音が社内に響くのを夢見つつ、今日も『労働保険の手引き』のお勉強をする新米社員でありました。
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