2021年9月5日(日)のパラリンピック閉会式を以て、東京2020大会の全てが終了いたしました。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、1年延期・無観客開催等、異例尽くしの大会でしたが、全行程が終わり関わった方々もホッとしたことと思います。
自国開催だけあって、私もこれまでの大会に比べ、オリンピック・パラリンピック共にテレビ観戦する時間が長く、人類の身体と精神の強さの極みに、幾度となく驚かされました。
さて、皆さんはスポーツで世界一を決める大会として、オリ・パラはよくご存じかと思いますが、パラリンピックの中に、聴覚障害の方(=ろう者)の部門がないことはお気づきになりましたか?
実は、ろう者の方が出場する国際的なスポーツ大会が、別に存在するんです。
その名も、「デフリンピック」。
デフ(=Deaf)が、ろう者の方を意味する言葉ですので、デフ+オリンピックで「デフリンピック」という名称となっています。
余談ですが、パラリンピックの「パラ」は、もともとは下半身まひを意味する英語の「パラプレジア(Paraplegia)」が由来。
実は、当時は、出場資格を脊髄損傷の車いす選手に限定されていました。
その後、出場資格が、「まひ」だけでなく、視覚、知的などの障害を持つ選手に広がっていき、「パラ」が「平行の」を意味する「”para”llel」と解釈されて、「もう一つのオリンピック」と位置づけられるようになったそうです。
パラリンピックは、当初リハビリテーションに重きが置かれていたのに対し、デフリンピックはろう者の方の間における記録に重きが置かれている等、その歴史の違いも興味深いところ。
デフリンピックを運営する組織は、国際ろう者スポーツ委員会(International Committee of Sports for the Deaf)で、IOC・IPCのような略称で読むとICSDとなります。
デフリンピックも4年に1度の開催で、夏季と冬季が2年おきに開催されていますが、まだ日本での開催実績はありません。ぜひ、日本でも開催していただき、全国でこの大会の知名度が向上を目指していただきたいですね!
そして、なんと、この大会は運営者もろう者の方。まさに、ろう者によるろう者のための国際的なスポーツ大会と言ってよいでしょう。
また、参加者が「国際手話」によるコミュニケーションで友好を深める点に大きな特徴があるそうです。言葉の壁は超えることができていない、オリ・パラを凌駕する文化が醸成されています。
さらに選手の皆さんは、ひとたび競技会場に入ると、練習時間・試合時間関係なく、補聴器等の使用が禁止されているのだとか。こうしたルールから、選手同士が耳の聞こえない立場でプレーするという「公平性」を重要視する精神が垣間見えます。
オリンピックの五輪、パラリンピックのスリー・アギトスと並ぶ、デフリンピックのエンブレム(ロゴマーク)はこのようなデザイン。
このマークについて、全日本ろうあ連盟スポーツ委員会ウェブサイトでは、以下の通り解説がなされています。
ろう者のデザイナー、ラルフ・フェルナンデス(Ralph Fernandez)作で、国際的なろう者スポーツのコミュニティのポジティブでパワフルなシンボルです。「手話」「ろう文化」「結束と継続」といった強い要素がこのロゴマークに集約されています。
手の形が「OK」「GOOD」「GREAT」を意味するサインが重ねられており、それはまた「デフリンピック」の手話を表しています。さらに「結束」を表現しています。
ロゴマークの中央は「目」を表しており、ろう者が視覚中心の生活を営んでいることを示しています。また、赤色、青色、黄色、緑色はアジア太平洋、ヨーロッパ、全アメリカ、アフリカと4つの地域連合を表現しています。
すごく想いと意味のこもった力強いマークですね。
ぜひ「全日本ろうあ連盟 スポーツ委員会」のウェブサイトもご覧ください。
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